借金してでも・・・第三次補正予算
国の今年度予算が再度見直されることが閣議決定されました。
それによると、コロナ禍での経済対策を中心に約20兆円の追加支出を見込みますが、財源は国債の増発で対応するようです。
追加対策の中味は、ポストコロナに向けた経済構造転換に12兆、感染対策に4兆などで、話題のGoToキャンペーン費用は1兆円規模です。実は、感染対策や医療体制の整備には大したお金が割り振られないのですね。
ちなみに、今年夏の第二次補正予算では、コロナ対策、特に中小企業対策で、当初予算から60兆円もの支出増を見込みましたので、今回の第三次予算の結果、当初予算(100兆円)の2倍近い支出をすることになります。
この支出増の細かい内容は改めて精査できればと思います。
一方で、税収は増えませんので、公債を発行して財源を捻出するしかありません。その規模は、なんと、当初予算での発行予定額33兆円から大幅に増えて110兆円規模となります。結果的に、公債発行残高は1000兆円ほどになります。
イメージしやすくするため、収入が1000万円の家計に置き換えて説明してみると・・・
当初予算時は
給与所得700万円、借金330万円
支出800万円、借金返済230万円
借金残高 9000万円
だったのが、
三次補正では
給与所得700万円、借金1100万円
支出1600万円、借金返済200万円
借金残高 1億円
という形に変わったということです。
コロナ対策でお金がかかるのは仕方がないですが、なかなかシビれますね。。。
しかも景気が落ち込めば収入である税収も減ります。
政府が経済対策を優先したがる理由の1つはこの辺にあるのでしょう。
さて、普通、このような家計状態だったら個人に銀行はお金を貸してくれません。でも政府はどうして公債発行してお金が借りられるのか?それは、日本銀行や金融機関が引き受けてくれるからです(渋々かもしれませんが・・・)。日本人なので日本政府を信用しているのですね(一蓮托生なので信用せざるを得ないとも言えますが)。
ただ、そこも青天井ではないはずです。
今年は特別な状況ではありますが、やはりこの辺は気をつけてみていかないといけませんね。
日本の将来の人口~具体的イメージから未来の社会を考える
政府は将来の人口の長期予測を公表していて、年金を始め各種の政策決定に役立てています。この中味を改めて確認したいと思います。
政府予測では、出生率と死亡率についてそれぞれ3つずつの前提を置いていますが、ここで見るのは死亡率がメインシナリオのもののみとし、特に影響が大きい出生率について3つのシナリオの違いも含めて確認します。
詳細は下のほうに記載した通りですが、ポイントをまとめると以下の通りです。
・40年後の人口は1億を下回り、現在の7割~8割程度になる。
・65歳以上人口が全体の35~40%を占める(現在は26%ほどなので10%ポイントの増加)
・労働力人口のコアである15~64歳は現在の60%から50%近くまで低下。人数で言えば7500万人から5000万人を下回る規模、つまり現在の3分の2に減少。
ということは、今後に向けて以下の対応が重要ということですね。
・働く人が減るので、更なる機械化が必要(なので、ロボットに人間の仕事が奪われるという批判は少し的外れ)
・一方で高齢者の増加は介護等の要員の需要増を生むので、ここをどれだけロボット化できるかが重要。もちろんロボットが出来ないことは人間が対応するので人手の確保も必要
・子供の減少で、教育産業は大人への教育へのシフトが必要
以上、どこかで既に聞いた話も多々あるかと思いますが、これらは今日ご紹介した人口推計のような具体的な根拠データに基づいているということを理解頂ければと思います。
こうしたデータから、未来の社会が、漠然としたイメージではなく、具体的な姿で把握できるわけです。
これらデータを使って未来の社会の様子を考えてみることもなかなか面白いですし、ビジネスをやりたい人や政治をやりたい人は特にこういう取り組みをする意義が大きいと思います。
出所
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/db_zenkoku2017/db_zenkoku2017gaiyo.html
フリーランスと社会保障
本日の新聞から「俳優などフリーランスの一部に労災保険適用へ 来年度」といった報道がされています。
12月8日の厚労省の部会で検討され大筋で合意されたようです。
■部会資料の概要
以下の3つに従事する個人事業主に労災保険の「特別加入制度」の対象とし、労災保険に加入できるようにする。
①芸能従事者(約22万人):芸能実演や演出の提供もしくは芸能制作に従事する者(主に俳優が想定されている様子)
②アニメーション制作従事者(約1万人)
③柔道整復師(約7万人)
(出所)厚労省 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15300.html
■どんな場合に労災が?
例えば、芸能従事者の災害として以下が例示されており、こうした事故に対して労災保険が支給されるものと思います。
・俳優の仕事の現場における事故例:「のどポリープ・声かれ・炎症」「ヘルニア・椎間板損傷」「捻挫」「膀胱炎」
・怪我・故障が発生した原因:「疲労」「使いすぎ」といった、活動を重ねることによるものが半数を超えている。
■実際に加入するには
記事だけ読むと全ての俳優やアニメーターが加入できそうに思えますが、実際は、母体となる団体が「特別加入団体」として承認される必要があるようです。なので、一匹狼的なフリーランスは加入できないのかもしれません。
筆者に関係するところでは音楽家やオーケストラの楽団員などが加入できるかが気になります。
サラリーマンの場合、病気に備える「健康保険」、解雇や休業に備える「雇用保険」、仕事中の事故や災害等に備える「労災保険」、老後に備える「年金保険」と、多くの公的保険制度が整備されています。
これに対し、自営業者・フリーランスの場合は、ざっくり言えば以下の通りで、サラリーマンに比べこうした公的保障が手薄です。
・健康保険はあるが、サラリーマンより補償内容が若干劣るほか、保険料が全額自己負担(サラリーマンは会社が半分出してくれる)
政府は、「一億総活躍社会の実現」を目指して多様な働き方の実現を目標に掲げており、フリーランスも働き方の一つだと認識していると思います。しかし、公的保障におけるサラリーマンとの格差は大きく、フリーランスが安心して働ける環境にはなっていないと思います。
また、フリーランスに限らず、働き方によって社会のセーフティーネットが大きく異なるのは、多様な働き方の実現の制約になります。
今回は小さな1歩にすぎません。特にコロナ禍でフリーランスの立場はより厳しくなっているケースが多いと思いますから、こうした取組みを早く進めてほしいものです。
【書評】日本社会のしくみ
600頁に迫る大作だが、興味深い話が多く、人事制度や年金制度の仕事をする者としては非常に勉強になった。
日本的雇用が出来上がった経緯、諸外国との比較、また、今の公的保障制度が昔の「カイシャ」と「ムラ」という世の中のしくみを前提にできていて、最近の世の中の変化(「カイシャ」「ムラ」以外の層の増加=「大企業型」「自営業型」「残余層」とも表記されている)に対応できていないこと、等々。
また、欧州諸国は職務の平等があるので企業間の異動がしやすいが日本は会社内の平等が重視されている。加えて企業内でしか通じないスキルが重視されることもあり、転職がしにくい。
また、教育システムも、こうした企業の対応に人口構成の変化(団塊ジュニアの存在など)も相まって大きく影響を受けている。
自分に当てはめてみると、ムラ育ちの時期は会社員は回りに少なかったこと、運良く大企業に入ったことで余り格差を感じさせられることがなかったこと、専門資格を取ったことで欧州に近い職場選択ができたこと等は、実はユニークな状況だったことが理解できた。
最後に、しくみを変えるのは大変だが、しくみを選択するのは私たち自身だというメッセージ。ここは是非みんなにも考えてほしい。