わっちのコンサルブログ~難しいことを簡単に

コンサルタント稼業のわっちが、経済やビジネスに関するトピックについて語り、時に問題提起します。週に1、2回の更新を目指します。

投資の理論 基礎の基礎(その2)

 みなさまこんにちは。

 前回のブログは総論的に、投資に伴うリスク(不安)をどう捉えればよいかを説明しました。

 

 

business-issues-watch.hatenablog.com

今回は、現実の投資の方法について具体的に説明します。

 

3.実際の投資対象

 

(1)どんな投資対象があるの?

今回は、実際に我々が投資できるものについて説明します。

大雑把に言うと、次のように分類できます。

 

①預貯金

銀行預金のことです。基本的に引き出しが自由でかつ元本が保証されるため、収益性は最も低いといえます。

  

②不動産

 本来は居住したり事務所を構えるのが不動産の目的ですが、不動産を買ってマンションを貸すなどすれば家賃収入が得られますので、投資対象となりえます。

 

③有価証券・・・債券、株式

 文字どおり読めば「価値のついている証券」ですが、言いかえれば「お金を借りている証書で、市場で転売できるもの」という感じでしょうか。

 債券は国、地方自治体、企業などがお金を借り入れるために発行しているものです。なので、債券を買うということは、発行者にお金を貸すということです。従って、満期がきたら元金を返済すること、借入中は利息を支払うこと、が証券に記載されています。発行体がつぶれない限りはこの約束が守られる仕組みで、仮につぶれてもその企業になにがしかお金が残っていれば返済義務がありますから、投資家にとっては比較的安全な投資先といえます。

 株式は企業が資金を出資してもらうために発行しています。債券との違いは「お金が返って来ない可能性があること」です。出資したお金を使って企業が大きな利益を挙げた場合はその配当が投資家に還元されますが、企業が事業に失敗すれば配当がないばかりか出資金も戻らないということです。加えて、債券と違ってお金を返す期限(満期)がないので、その意味でも、お金がいつ戻ってくるかが不確実、ということです。ただし、逆に企業が大きく成長すると、配当だけでなく、株価の値上がりや、株式の分割(1株持っていた人にもう1株もらえるイメージ)などの収益が得られます。最近だと、正味の株価が30年で78倍になった企業が話題になっていましたね。

 

④派生証券

 上のような資産を組み合せたり加工して2次的に作りだされた証券をいいます。

 代表的なのは転換社債です。これは「株式に転換できる権利がついた債券」なので、株式と債券の中間的な性質をもっています。

 また、最近はデリバティブ技術の発達で色々な派生証券(オプション等)があります。テレビCMが多くなっている「FX」も、派生証券を使った投資の1つです。

 派生証券の存在意義は「株式」と「債券」にはないさまざまなリスクリターン特性をもつ投資対象を用意できることにあります。例えば「株式よりリスクが2倍になるがリターンも2倍期待できる」投資対象が欲しい人もいますので、幅広いニーズに答えていけるということです。

 個人投資家も利用できる商品はありますが、実際は投資リスクが大きく仕組みも複雑なので、本稿では深く述べません。

 

金融商品・・・保険、投資信託など

 世の中にある投資対象を専門の会社が運用し、その収益を投資家に還元する商品のことをいいます。

 運用会社への報酬がかかるため、直接上記の投資対象を買うよりもコストはかかりますが、専門会社が運用することでより効率的な運用ができると期待できます。

 上記のどの投資対象に投資しているかによって、これら金融商品のリスクリターン特性はさまざまです。投資信託でもMRFマネー・リザーブ・ファンド:短期債券で安全に運用)はリスクがほとんどありませんが、外国株式投資信託はハイリスクハイリターンです。

 

以降、各対象別に、もう少し詳しい説明をしていきます。

 

 

(2)預貯金

法律的には銀行や郵便局の預金を指します。これらは元本が保証され、利息が付くというものです。

ただし、銀行が倒産した場合にはこの「元本保証」がつかない可能性があります。「ペイオフ」という仕組みで、1000万円以下は預金保険によって元本が保証されるものの1000万円超部分はカットされるというものです。加えて異常な低金利ですから、銀行預金は有利な投資対象とはいえなくなってきています。

 

(3)不動産

土地神話」なる言葉もあったように、不動産は戦後からバブル期まで一貫して上昇しましたので、買っておけば値上がりする優れた投資対象であると認識されていました。しかしバブル崩壊後は値下がりを続け、土地神話は崩れたといえます。

一方で、長い目で見れば、不動産は「インフレヘッジ機能(物価が上がると不動産価値もあがるので、資産の実質的な価値が下がらないこと)」がある数少ない資産ですから、本来は有用な投資対象であるといえます。

なお、以前は、不動産は購入単位が大きいため買える個人が少なく、適切な価格形成ができにくいですが、これも「不動産の証券化」という手法で解決されました。具体的には、REIT(不動産投資信託)という商品が普及しており、(広い意味での)不動産も投資対象に組み入れやすっています。

 

(4)有価証券

①債券

もっともポピュラーなのが国債ですが、地方債、金融債社債などもあります。

また、国債と一言でいっても満期等が異なる様々な種類が発行されています。

現状は低金利であるため、代表的な銘柄である10年国債の利回り(満期まで保有した場合の年平均利回り)も0.1~0.2%程度です。一般に金利は満期までの期間が長いほど、また発行体の信用度(格付け)が低いほど高くなります。

債券は安全というイメージがありますが、発行体がつぶれる可能性が高い場合はよりハイリスクハイリターンの投資対象になっています。

個人投資家国債そのものを買うこともできますが、国債の大半は金融機関が保有していて、むしろ公社債投信などの運用対象として個人投資家とつながっています。

なお、海外にもおおむね同様の債券が存在します。一般に日本より金利が高いため魅力的ですが、為替変動リスクに注意が必要です。

 

②株式

株式は昔から個人投資家に縁の深い投資対象であり、保有シェアも多くなっています。売買ができる市場はいくつかに分けられていて、取引所は東京、大阪等にあります。東京の場合は更に1部、2部、ジャスダックマザーズに分かれています。また、海外にも世界各国に株式市場があり、これらを利用する人も出てきています。

 

東証1部には1500もの企業の株が上場されており、日本を代表する市場です。上場には一定の条件があるため、ある程度の成長を遂げた「オトナの企業」がほとんどです。ただ成長期を過ぎてしまった企業も少なくないといえます。発行株が多く、成長率がさほど高くないため、店頭株に比べると株価の変動率は小さいのが一般的です。

東証2部は500社ほどの企業が上場しています。1部に比べるとやや小さい企業が中心です。

ジャスダックマザーズへの株式公開基準は取引所上場基準より緩やかであるため、いわゆる新興企業やベンチャー企業が多いのが特徴です。まだ評価が定まらない企業であるため、株価の変動が大きくなりがちですが、夢は大きいかもしれません。

 
 

======コーヒー・ブレーク========

「人の行く裏に道あり花の山」

 

みんなが注目している銘柄ではなく注目されていない銘柄を買うことが大きなリターンに通じる、ということを意味しています。誰も見向きもしないうちに安く仕込んでおいてその後注目を集める株になれば大きな値上がり益を得られるわけです。

もっとも、「いつまでも注目されない株」というのも現実にはあります。それじゃあ「花の山」には行けません。将来注目される株になるかどうかを確認するには「その企業の将来性や体力や業界の情報を足で稼ぐ」ことが大切です。

こういうのは「無名の野球選手を発掘するスカウト」と同じで、情報収集の時間と眼力のある人にとってはとても面白いと思います。株式投資の一つの醍醐味ですね。

そういう意味では、99年下期に急上昇したネット関連株はみんな「ドラフト1位」の指名が殺到している状態だったかなと思います。期待どおりに活躍するかどうかはこれからですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(5)投資信託

 

最後に、「投資信託」です。

 

投資信託の特徴と意義

 

投資信託は、多くの人からおカネを集め、合同で運用する「ファンド」です。

集めたおカネは株式や国債など各種の投資対象で運用され、それによって得られた収益を一定のルールで分配します。運用の結果、利益が出ても損失が出ても、それは投資家に帰属する仕組みとなっています。以下に特徴を箇条書きします。

 

 ○合同運用であるため、小口資金でも投資が可能

普通、証券会社で株式を買おうとすると少なくとも10万円程度以上の資金が必要になりますし、値段の高い株は相当の資金が無いと買えません。優良企業では100万円以上の資金が必要な株も少なくないですし、ITバブルの頃は、YAHOO株を買おうとすると何と1億円も必要でした。でも、投資信託ならば小口の資金でも株式の値上がり益を狙うことが可能になります。「皆でおカネを出しあって株を買う」わけです。そして、現物証券を買うよりも分散投資がしやすくなります。

 

○実際の運用は専門家が行うため、知識や時間のない人でも投資ができる

実際の株式を買うとなると、「上がりそうな株式を探し、できるだけ安く買えるタイミングを狙って買い、値上がりしたところで売る」という段取りになりますが、忙しい人や勉強する時間が無い人がこういうことをきちんと行うのはかなり大変ですので、プロに代行してもらって効率的に資産を増やそうということです。なお、プロに任せる以上、相応の報酬がかかることになります。

 

ということで、投資信託という名前は、「プロを信じておカネを託す」ということだと理解してください。

 

蛇足ですが、投資そのものを楽しみたい人、勉強したい人にとっては、投資信託より現物株のほうが魅力があります。上がりそうな株式を探してくるのは結構楽しいですし、経済にも詳しくなりますしね。

 

 

②大雑把な分類

 

実際の投資信託は何百種類もありますが、大きく分類すると「株を中心に積極投資する株式投信」、「安全を重視して債券を中心に運用する公社債投信」、「株式と債券をある程度ずつの割合で組み入れるバランス型投信」に分けられます。

これらのどの分類の投資信託を買うかは、投資家自身が決めなければなりません。その意味で、投資信託は「運用をプロに代行してもらう」とはいっても、完全なおまかせではありません。

株を中心に積極投資するのか、安全を重視して債券を中心にするのか、といった点は貴方自身が生活設計などを考慮して自分で決めなければならないのです(この点は改めて解説の場を設けます)。

 

 

投資信託の選び方

 

何百もある投資信託。資産運用の仕方も千差万別です。でも、運用に失敗した場合でも損失の補填はないわけですから、大切なおカネの運用を託す以上は「その投信はどんな運用をしようとしているのか」、つまり「運用方針」をあらかじめ知っておくべきです。

一般に、運用方針としては次のような項目を抑えておくべきであり、投信運用会社自身もこうした方針を必ず開示していますので、購入にあたってはよく確認しておく必要があります。

 

 ○投資対象は何を中心にするのか

  前回お話した「大雑把な分類」を把握するということですね。

  株式を中心に運用するのか、国債中心なのかなどです。

     

 ○どのような株式を買うのか

  全業種を平均的に買うのか、特定の業種を重点的に買うのか?です。

  最近情報通信銘柄を中心に運用するファンドが非常に多くなっています。

  こうしたファンドを「テーマ別ファンド」といいますが、この多くは業種別ファンドといえます。

  一般に、特定業種を重点的に買うほうが価格の変動リスクは大きくなります。

  

 ○どうやって値上がり益を得ようとするか(運用スタイル)

   ・成長しそうな企業を人手をかけて探すことで大きな値上がり益を狙う。

     (ボトムアップアプローチなどといいます)

   ・株価の周期性等を利用し、割安になったら買って割高になったら売る。

     (クオンツ運用などといいます)

   ・特に動かずに、市場平均なみの平均的な値上がり益を狙う。

     (いわゆるインデックスファンドです)

  などなどです。

  ちなみに、上の2つは市場平均を上回ることを目指すものであり、「アクティブ運用」といいます。 一方3つ目のは市場平均並を目指すものであり、「パッシブ運用」といいます。

 

ちょっと専門的になりましたが、より理解を高めていただけるよう、レストラン選びに例えてみましょう。

 

 ○何のレストランなのか。和食か洋食かイタリアンか?はたまた何でもあるのか?

 

 ○人並みの味を安く提供するレストランなのか、高いけど他より良い味を目指しているのか?

 

 ○素材を探し歩いて厳選しおいしい料理を出すのか、普通の素材を料理方法でおいしくするのか?

 

といったところでしょうか。

 

なお、投信を評価する会社というのがあり、こうした視点による評価結果を公開していますので、参考にするとよいと思います。レストランを選ぶときに、全部は味見できないので「ミシュラン」を参考にするというのと同じですね。