フリーランスと社会保障
本日の新聞から「俳優などフリーランスの一部に労災保険適用へ 来年度」といった報道がされています。
12月8日の厚労省の部会で検討され大筋で合意されたようです。
■部会資料の概要
以下の3つに従事する個人事業主に労災保険の「特別加入制度」の対象とし、労災保険に加入できるようにする。
①芸能従事者(約22万人):芸能実演や演出の提供もしくは芸能制作に従事する者(主に俳優が想定されている様子)
②アニメーション制作従事者(約1万人)
③柔道整復師(約7万人)
(出所)厚労省 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15300.html
■どんな場合に労災が?
例えば、芸能従事者の災害として以下が例示されており、こうした事故に対して労災保険が支給されるものと思います。
・俳優の仕事の現場における事故例:「のどポリープ・声かれ・炎症」「ヘルニア・椎間板損傷」「捻挫」「膀胱炎」
・怪我・故障が発生した原因:「疲労」「使いすぎ」といった、活動を重ねることによるものが半数を超えている。
■実際に加入するには
記事だけ読むと全ての俳優やアニメーターが加入できそうに思えますが、実際は、母体となる団体が「特別加入団体」として承認される必要があるようです。なので、一匹狼的なフリーランスは加入できないのかもしれません。
筆者に関係するところでは音楽家やオーケストラの楽団員などが加入できるかが気になります。
サラリーマンの場合、病気に備える「健康保険」、解雇や休業に備える「雇用保険」、仕事中の事故や災害等に備える「労災保険」、老後に備える「年金保険」と、多くの公的保険制度が整備されています。
これに対し、自営業者・フリーランスの場合は、ざっくり言えば以下の通りで、サラリーマンに比べこうした公的保障が手薄です。
・健康保険はあるが、サラリーマンより補償内容が若干劣るほか、保険料が全額自己負担(サラリーマンは会社が半分出してくれる)
政府は、「一億総活躍社会の実現」を目指して多様な働き方の実現を目標に掲げており、フリーランスも働き方の一つだと認識していると思います。しかし、公的保障におけるサラリーマンとの格差は大きく、フリーランスが安心して働ける環境にはなっていないと思います。
また、フリーランスに限らず、働き方によって社会のセーフティーネットが大きく異なるのは、多様な働き方の実現の制約になります。
今回は小さな1歩にすぎません。特にコロナ禍でフリーランスの立場はより厳しくなっているケースが多いと思いますから、こうした取組みを早く進めてほしいものです。