資格を取ることの意味~費用対効果を考えよう
ビジネスパーソンや学生の皆さんの大半は、「資格」を取ることに何らかの関心があるかと思いますし、避けて通れない話題になっていると思います。
でも、資格を取るには、時間とお金をかけて勉強しなければなりませんし、試験に受かることが必要な資格も多いです。そう、家族との時間や、友達と遊んだり趣味を楽しんだりする時間とお金を削らなければならないわけですね。
今日は、そんな「資格」の話です。
なお、企業の中に固有の資格があるケースもあると思いますが、ここでは、世間一般に通用する(つまり転職しても価値がある)資格に限定してお話します。
■資格の種類
日本にはどのくらいの資格があるのでしょうか?
資格の定義は明確ではないようで、はっきりした数はわかりませんが、ある調査によると1000を超える資格があるようです。結構多いですね。
以下、私なりの切り口で資格の種類を分析してみます。
1)資格を認証する主体による分類
国が定めた基準により認証されるもの(公的資格)と、民間団体が認証するものに分けられます。
前者の代表は、運転免許、医師免許、公認会計士などが挙げられます。
後者の代表は、ファイナンシャルプランナー(FP)、英語検定、TOEICなどが挙げられます。
一般には、公的資格のほうが格上といえると思います。なぜかというと、公的資格は国が認めるもので信頼性や知名度が高いことや、その資格者でないと当該業務を行えない場合が多いことが挙げられます。
ただし、TOEICのように、民間資格であっても信頼度や知名度が高い資格もあります。
2)資格の効果による分類
資格がないとその業務を行えない資格と、そうでないものとがあります。
前者の代表は、運転免許、医師免許、公認会計士などです。車の運転、医療行為、会計監査は、法令によってこれらの資格を持った人でなければ実施できないとされています。いわゆる「業務独占資格」です。
後者はTOEICが代表的ですし、簿記1級や数学検定や英検なども同じです。これらは、その人の能力を証明することはできますが、その資格を持っていないから能力がないとか、その仕事をさせられないという風にはなっていません。
3)資格取得の難易度
一般に、公的資格のほうが難しいと思います。その資格がある人だけに業務を独占させるのですから、ちゃんとした人にのみ業務をさせる必要があり、当然そうなりますね。
■資格選びのポイント
1)自分がどんな仕事をしたいのか
医師や会計士など、その資格がなければできない仕事をしたいのであれば、資格取得は必須ですね。これは当たり前と思います。
一方で、資格取得が求められなくても、その分野に詳しくなるために必要な知識があることをアピールするには、資格があったほうがよいです。例えば証券アナリストやFPの資格がなくても金融機関で働くことはできますが、自分に能力があることの「お墨付き」にはなります。TOEICも同じですね。
2)首尾一貫性、適合性
世の中には1000を超える資格があるといいました。なので、資格がお墨付きになるといっても取れる数には限度がありますから、やみくもに多くの資格を取ることは不毛だと思います。
資格マニアになりたいのであれば別ですが、自分の就きたい仕事や自分の特性に照らして首尾一貫した資格取得を考える必要があると思います。
ということは、自分の就きたい仕事や特性をよく知っておくことが大事になります。特にこれから就活するような若い人は、ここをよく考えてみましょう。
3)将来性・希少性
やはり将来において需要が増えそうな資格のほうが、仕事にあぶれるリスクが少ないので、資格を取る意義が大きいと思います。
また、仕事をいかに確保できるかを考えると、希少価値のある資格のほうが相対的に有利になると思います。また、就活や転職時のアピール性も、希少性が高いほうが有利に働くと思います。尤も、あまりにニッチすぎる資格で、ほとんどの人がその資格を知らないと、相手には響きませんが。。。
■資格の費用対効果
ここで、本題である「費用対効果」について考えてみましょう。
まず、資格の取得と保持にかかる費用は千差万別ですが、分類としては以下の通りですので、皆さんが関心のある資格について、以下の視点から確認してください。
・試験勉強に要する金銭的負担(テキスト代、通信教育費など)
テキスト代だけなら数千円程度で済むものもありますが、通信教育やDVDや通学などを使う場合は数十万円単位になります。
・試験勉強にかかる時間
資格により千差万別です。1000時間を超える時間がかかるものもあるようです。
また、仕事や、学校の授業で学べるものなら追加の時間はあまり使わずに済みますが、そうでない場合は自分の自由時間を捻出することになります。
・受験料
数千円~数万円と思いますが、何種類もの試験をパスしないといけない資格の場合はその回数分だけ費用が掛かります。
・資格維持費
意外に見落としがちなのがこれです。年間数万円単位の資格維持費がかかるものも珍しくありません。また、お金以外に、研修の受講などが必要な場合もあります。
資格の取得と保持にかかる費用が確認出来たら、それに対して、資格取得によって得られるメリットを「具体的に」確認してみましょう。これを「具体的に」考えることがとても大切です。
・その資格がないとなれない職業に就きたいか
・その資格があることは、本当に就職に有利か
なお、ここでは金銭面や就業機会といった有利不利を挙げましたが、個人的にはこれだけではないと思います。
例えば、資格を取ることは、「自分に箔がつく」ので、自分に対する自信が高まり、より前向きに行動できるという効果があります。こうした姿勢を持つことで、より多くの仕事を経験し、自分自身を成長させる機会が増えると思います。
また、その分野を一通り勉強することで、その分野を体系的に学習できます。仕事から得られることはもちろん有益ですが、自分が経験した情報のみに知識が偏る可能性があり、その意味では体系的に勉強することが必要だと思います。
■(おまけ)辛口コメント
最後に、こうした資格に関するビジネスのことにも触れておきましょう。
上述の通り、資格の取得は、現代人にとって関心の高いテーマです。
資格を取ろう!という前向きな話の後で、決していい話ではないのですが、こうしたことも知っておくほうがよいでしょう。
1)資格取得を支援するビジネスの存在
資格を取りたい人に対して、教材や教育を提供するビジネスが活発化しています。
良心的でちゃんとした品質の会社が多いとは思いますが、一部にはそうでない業者も存在しているようです。最近あるウェブで見たのですが、イギリスのオンライン教育会社に対し、お金を払ったのにまともな教育が受けられなかったとして加入者が訴える事件があったそうです。
ここまで行かなくても、イマイチな先生が多いとか、資格の必要性を過度にあおって過剰なセールスをする業者も存在すると思います。
2)資格にまつわる利権
上記の通り、資格取得者だけに独占的にその業務をさせるケースもあるわけですが、これを悪用して特定の人や企業に有利になるような資格の運用をするケースがありうると思います。既得権益や天下り先を確保するために使われるということですね。
ではまた。
M&Aは「筋トレ」・「断捨離」~ハゲタカばかりじゃないその意義
M&Aという言葉が日本で普通に知られ始めたのは1990年代以降だと思いますから、まだ30年ほどですね。
15年ほど前のホリエモン事件や、ハゲタカファンドを題材にしたドラマなどの影響もあり、悪いイメージがあると思いますが、実際は、今の企業では欠かせない戦略の一つであり、企業で働く人がM&Aに直接間接に接することも普通になっていると思います。
■M&Aとは
M&Aとは、Mergers(合併)and Acquisitions(買収))の略称です。
つまり、企業同士が合併したり、企業がほかの企業に買収されるといったイベントです。
企業が丸ごとM&Aの対象になるケースだけでなく、企業の特定の部門だけを切り出してほかの企業に買ってもらうこともM&Aに含まれます。
■M&Aの種類と目的
M&Aの種類と目的には様々なものがありますが、代表的な例を挙げてみましょう。
1)同一業種等での合併
これは一番わかりやすいですね。
昔の日本は、同一業種の中に比較的規模の小さい企業が群雄割拠していましたが、似たようなこと(研究開発やシステム構築など)を別々にやっていると非効率です。
合併によって体を大きくして規模の利益(スケールメリット)を出していこうというのがこれです。
1990年代後半にたくさん行われた金融機関の合併はこれの典型です(以前は15行あった都市銀行は今は実質4行です)し、世界的に薬の開発競争が激化している製薬業界、新興国との競争が厳しい製造業などで多くの企業が合併しています。
2)ファンドや他企業による買収
経営不振に陥り、単独で企業活動を続けるのが難しい場合に、投資ファンドに出資してもらったり、他企業の傘下に入るといったケースがこれです。
資金面のサポートを受けるだけでなく、ビジネス面のノウハウの支援や、経営者の派遣などを通じて、企業の事業の見直しが積極的に進められることが普通です。
経営者や幹部を取り替えたり従業員のリストラをしたりすることも多く、このことがドラマなどで放送されたことでネガティブイメージの遠因になっていると思います。
ただ、それまでの経営がユルユルであったのを、外部の血を入れることでしっかり筋トレして稼ぐ力をつけるということであり、意味のあることと思います。
3)事業部門の売却・買収
大企業は高度成長期やバブル期にさまざまな分野に業務を拡大してきましたが、競争の激しい現代においては、すべての事業で成功することは難しくなっています。
そこで、自社のコアビジネスに関係が薄い事業や、競争力が弱い事業などを他の企業に売り、自社のコアビジネスに集中するということです。
逆に買い手側は、売り手企業が持っていたビジネスを活用することで自社の企業価値を高められると判断すれば、その事業を買うわけです。
「選択と集中」あるいは事業の「断捨離」ともいえます。
個人がメルカリなどを使って、自分がいらなくなった物を売るのと似ていますね。自分はいらくなったものでも、ほかの人には価値がある場合もあるから、取引が成り立つわけです。
4)事業承継
上の3つとは少し違いますが、小さな工場やお店などについて、創業者が高齢化しても子息が別の仕事をしていて後継ぎがいないといったケースも増えているようで、このような場合に工場やお店を廃業しないためには誰かに経営を引き継いでもらう必要があります。これも広い意味でのM&Aかと思います。
■M&Aは成功しているか?
10年ほど前のある調査によると、日本企業のM&Aの成功率は3割未満でした。
直近の別の調査では、5割近くまで高まっているようですが、まだ低い水準といえます。
(何をもって成功というかは判断が難しいですが)
なぜ失敗するか?ですが、例えば以下のようなことが挙げられます。
・相手企業や対象事業の実力を過大評価して、過大なお金を使って取得してしまった。あるいは、安く売りすぎてしまった。
・合併の時に、相手企業の実力やカルチャーが確認できなかったが、いざ合併したらカルチャーが全然違い、従業員同士の連携や交流が進まず、仕事の統合や改革が進まない。
・買った企業や事業を担っていた有能な人材が辞めてしまい、事業運営に支障が出た。
なので、M&Aの際には、相手企業を事前によく調べることが大事です。これを「デュー・デリジェンス」(企業精査)といい、通常、会計事務所や法律事務所など多数のコンサルタントが支援しています。
人間でいえば、結婚相手を探すときにはお見合いなりデートなりを重ねて人となりや生活習慣・態度を知ることが必要ですし、そのために他人の評価を聞いたり、昔であれば興信所を使って身辺調査をしたりする場合もあったわけですが、これと似ています。
ちなみにデュー・デリジェンス(DD)にも様々な分野視点があります。以下、こうした仕事に関心がある方のために参考までに例示します。
・財務DD
財務状況を精査します。上場企業は決算書を開示していますのでそれを見るとおおよそのことはわかるのですが、粉飾がないかや、決算書から見えない足元での状況変化などを精査することになります。
・税務DD
法人税等の追徴リスクなどを精査するほか、M&A時にどのような資本取引にするかで税務上の扱いがどう変わるかを助言したりします。
・法務DD
潜在的な訴訟案件や、ハラスメントなどコンプライアンス事案の状況などを精査し、法務面のリスクを把握します。
・人事DD
人事処遇制度の精査をして人件費構造を把握したり、キーパーソンの特性などを把握したりします。
・ITDD
ITシステムは今や企業に欠かせないインフラです。これの品質やコストを精査し、M&A後のシステムの統合再編に活かします。
・環境DD
工場からの廃棄物によって近隣の環境汚染などを起こして損害賠償を受けるリスクがあるケースもありますので、こうしたリスクがないかを調べます。
・ビジネスDD
本業のビジネスの成長性や他企業との競争力を精査します。その業界全体の状況に照らしての強み分析や、その企業が外部に公表した事業計画(将来の売り上げ予測など)の妥当性を精査したりします。
■従業員にとってM&Aは良いことか?
M&Aにネガティブなイメージを持つ人は多いと思います。例を挙げるとこんな感じでしょうか。
・買った企業のいいようにされてしまう。
・ポストが減ってしまい出世しにくくなる。
・仕事のやり方を変えなければならなくなる。
・リストラされる。あるいは賃金カットされる。
確かにこれらは従業員にとっては厳しいことですね。
ただ、例えば仕事のやり方を変えるという点は、他人から言われないとやらなかったことを実行する契機になると考えれば、そう悪いことともいえないと思います。
ちなみにリストラや賃金カットについては、投資ファンドであっても決して無茶なことはできませんので、過度に恐れる必要はないと思います。すなわち、労働基準法などが定める制約を遵守しないと罰則や企業の評判低下になりますし、不合理な賃金カットやリストラの実施によって、やめてもらうと困る優秀人材が失望して離職してしまえば、企業活動ができなくなり困ります。
さらに、「経営陣や上司が現場の意見を聞かず、変わらないので、困っているんだよね」という従業員にとってはM&Aはよいことかもしれません。困った経営者や上司が退出することで、その企業が変わるチャンスができると考えることもできます。
ではまた。
忙しい時は
腰を据えたブログが書ける時間がとれないので、今日はライトなコラムで失礼します。
今月は相次いで仕事が入り、嬉しい悲鳴を上げています。
契約に至ったものも多数あるなかで、提案の依頼も多数。部下も忙しいので仕事を振れないし、久々にプレーイングマネジャー的な毎日です。
こういう時は実はけっこう仕事に集中できるし、達成感がありますね。
日本の会社では普通、年齢が上がって管理職になると、自分では手を動かさなくなるのですが、この業界は決してそうではないので、他の一般的な日本のオジサンの中では手が動かせるほうだと思います。
まぁ、時代は変わりつつあり、年齢が上がっても再雇用されるには、自分自身が仕事ができるように鍛えないといけなくなってきましたから、自分が特殊というわけでもなさそうですが。
こういう環境のほうが、錆びることなく自分を磨いていけるわけで、大変ではありますが、ある意味幸せかもしれません。
ではまた。
副業の時代~お金だけじゃない人生100年時代の働き方
従業員の副業を認める企業が増えているようです。
先日は、高給取りでお堅い「銀行」でも兼業が認められるようになったとの記事がありました。
厚労省や民間団体などが調べたところでは、副業を認める企業は3割とも5割ともいわれており、以前よりは増えた印象があります。
一方で、実際に副業をしている人は、2017年の厚労省調査では2%ほどだったようですが、2019年の別の民間調査では10%を超えてきているようであり、まだ一部にとどまってはいますが増加しているようです。
■副業の種類
副業といっても様々なものがあると思います。
・ネットオークションでの売買とか、自分の書いたブログへの広告収入といったもの
手軽であり、すき間の時間を使って誰でもできそうですね。ただ収入は限定的かと思います(フリマで売るものがたくさんあれば別ですが)
・ブログや動画の作成によるコンテンツ販売
こちらも敷居は低そうで、多数の人が取り組んでいそうです。ただこれも競争は厳しいので、売れっ子になれない人が多いとは思います。
・趣味を商品にして販売
例えば手芸好きの方が作品を売るとか、お菓子作りが得意な人が通販でお菓子を売るといったものです。趣味と実益が兼ねられるので、腕に自信がある人にはよいですね。
・コンサルティング・翻訳・ソフトウェア作成といった専門性を生かした活動
専門性を生かしてフリーランスの活動を副業とするものです。専門性がある人には取り組みやすそうです。ただ、勤務先の仕事と競合する可能性が高いので、実際に副業として取り組めるかは微妙な面があります。
・本来の勤務先以外の勤務先で働く
勤務時間外に別の会社で働くもので、「夜のバイト」や最近流行りの「ウーバーイーツ」なども含まれると思います。
・株式やFXといった投資
これが副業に該当かは微妙ですが、ご自身では副業だと言っている人もいるようです。
■副業の目的
いろいろな調査を見ると、一番多いのは「収入の増加」のようです。
残業の削減や賃金の低下などで減った収入をカバーしたいとか、より余裕がある生活をするために収入を増やしたい、といったことですね。これはほとんどの人に共通するでしょう。
ただ、これ以外にも色々な目的があるようです。
・本業とは別のことにチャレンジしたい
・認められたい、自己実現したい
・独立するためのステップ(自分の力を試す)
・会社以外の別の世界の人とつながりたい
副業は、思うようにお金が稼げないことも少なくなく、また本業との両立に苦慮するなど、決して楽ではありません。なので、続けていくには、お金以外の動機も非常に大事だと思います。
■副業の効果
・ビジネス全体を考える癖がつくこと
まず、自分が働かないと収入が得られないものが多いので、自ら進んで考え、動くことが多くなります。横文字で言えば「オーナーシップ」をもって取り組むということです。
例えばコンテンツや商品が売れない場合に、「どうしたら売れるか」を考えるわけですが、商品の品質をいかに向上させるかや、宣伝方法、値段をいくらにするかといったいろんなことを自分自身で考えることになります。これは企業の歯車で働いている人が自分の担当している部分しか考えないのとは大きく異なります。
会社でよく「上司になったつもりで仕事しなさい」などと言われますが、それによってすぐ給料が変わるわけではないので、つい他人任せ・上司任せな部分が出がちですよね。
副業をやることでこうした「オーナーシップ」が自然と身につくことになり、よりよいビジネスパーソンになることが期待できると思います。
・自分自身のやりたいことができること
勤務先では勤務先の方針がありますから、何でも自分のしたいことができるわけではありませんが、副業であればある程度自分でやることを決められます。
大変なのは同じですが、自分でやると決めたことであれば、ストレスも少なく取り組めると思います。
■副業の留意点
・頑張りすぎない
両立しようとして働きすぎてしまうと、いくら楽しくやりがいがあっても体力的に続かないですし、過労や病気に陥る懸念もあります。ほどほど、バランスを意識したいです。
また、副業に熱を入れすぎて本業を疎かにするのはよくありません。やはり副業は「副」業であり、本業をしっかりやってきちんと給与をもらうことが重要です。
・勤務先での制約条件に注意
勤務先が副業OKの場合でも、一定の条件を課しているケースが多いと思います。
例えば、勤務先の業務と競合しないことや、勤務先で得た知識や情報を話さない・使わないといったことが典型的です。
自分の専門性を生かせそうな副業がある場合でも、その専門性が社業を通じて得ている場合は、副業にはできない場合も多そうです。
■最後に
自分の経験でも、副業をすることは、単に収入が増えるだけでなく、自分を成長させる良い機会になると思います。
特に、人生100年時代においては、一つの仕事を完遂するだけでは足りないような気もしています。
どんな副業を何のために行うかは各自各様と思いますが、何かできることを考えてみてはいかがでしょうか。
ではまた。
企業不正に立ち向かう仕事~意外と重要な注目の仕事
昔から、企業の不正は頻発しており、最近もそうした報道がされていました。
不正をやってしまい、それがばれると、企業はユーザーや社会からの信頼を失い、倒産したり経営が成り立たなくなるのですが、それでも不正はなくなりません。
これを受けて、企業不正を防ぐ仕事の重要性は高まっています。
■不正のタイプ
「企業の不正」にもいろいろなものがあります。代表的なものを挙げてみましょう。
・製品の品質に関する不正
例えば電気製品やIT機器であれば、製品の品質と実際の品質が、カタログで書かれているより劣っているケース。CMの誇大広告もこれですね。
また、食品の場合だと、食品成分表示に嘘があって、実はそば粉などのアレルギー物質が入っているケース。これは命にも関わるので大変重大な不正です。
・会計不正
決算書の数字がよく見えるように意図的に売上額を水増しするようなケース。最近は手が込んでいてわかりにくいものも多いようです。
・環境不正
例えば工場からの廃棄物は一定基準で浄化する必要がありますが、それをせずに排出してしまうケース。これも社会への影響は甚大です。
■不正をしてしまう動機
個人の犯罪や不正は、個人的な憎しみが原因である場合や、不正をすることで社会を手玉に取るような愉快犯的な面から起きる場合も多いと思いますが、企業の場合はこうしたケースは稀だと思います。
ではなぜ企業は不正をしてしまうのか?その多くは、「自分(の会社・商品)をよく見せたい」、つまり今風に言えば「盛ってしまう」というのが動機だと思います。
つまり、「他社に劣後する商品しか作れないが、売上を増やしたい」とか、「業績が悪いのを銀行に知られたくない」、といったことです。
思い付きや興味本位でやっているわけではなく、必要に迫られて実行しているということですね。
ばれた時に信頼を失い経営に大ダメージがあることは認識しつつも、背に腹は代えられずに不正をやってしまうというケースが多いように思います。
■不正を防ぐ仕組み
最近は、企業の不正を防ぐシステムがいろいろ整備されています。
まず、企業内での予防システムとしては、内部監査や、品質管理部署による製品チェックなどがあります。
ただこれは、経営者がその気になれば、無効化されやすい面があります。
なぜなら、これらチェックをする人たちも、その企業に雇われてお給料をもらっているからです。
もし経営者から圧力をかけられたら、不正を見つけても言えない、といった状況が想像されます。
なので、企業外の仕組みとして、税務調査、所轄官庁による検査、会計士監査なども行われています。
ここで、税務調査や所轄官庁による検査は、当局からの検査なので強制力もあり、権限を持った検査といえます。金融機関を舞台にした人気ドラマでも、当局の検査官が会社に乗り込んで強制捜査をしていましたよね。
ただ、当局の検査は省庁によって強度が違う面があり、すべての企業やビジネスがこうした検査で網羅的に監視されているとも言えない面があります。
また、会計に関しては会計士監査が重要な機能を担っていますが、当局と違って強制力は弱いので、経営者が情報を出し渋ったり、会計監査契約を打ち切ると言ったりすると、なかなかその機能が果たせない場合も生じます。
まだまだ課題があるということです。
■不正発見の新しいしくみ
最近は、ITやAIを活用した新しい不正予防システムが構築されてきています。例えば、コンピュータを使い、過去のメールの履歴を全部調べて怪しいやり取りを見つけ出すとか、変な時間に大量に会計伝票が処理されていたりしないかを調べたりします(これらはフォレンジックと言われます)。
また、多くの会社では、セキュリティカードで入退館を管理し、PCのログで経理システムなどへのアクセス履歴も記録しています。貸与スマホのGPS情報で外出先での行動履歴を記録しているという話もありますので、不正の証拠がキャッチしやすい状況になっているといえます。
■企業不正の防止にかかわる仕事
上記で述べたように、企業不正を防止するために様々なしくみがあり、これらには一定の専門性を持った人が従事しています。
ここでいう専門性には、製品不正関連であればその製品の製造過程や法令・承認基準といったルールに関する知識が必要ですし、会計不正関連であれば会計に関する専門知識が必要です。
こうした固有領域の知識に加え、最近のIT化に対応するための「ITに関する知識」も必要です。
少し話がずれますが、ハッカーによる不正アクセスが最近よく聞かれますが、これに対応するために、警察などが元ハッカーだった人を採用しているのはよく知られた話です。
また、企業不正を検出して正していくためには、上記に加え、「健全な正義感」、「経営との独立性」、「不正が起きやすい環境を理解する力」なども必要と思います。
■最後に
不正を防ぐ仕組みや機能は、製品やサービスを作るといったビジネスそのものではないので、地味で、特に若い人は良く知らない領域だと思います。
しかし、ひとたび企業不正が起きれば、企業の評判をいっぺんに落としてしまいます。
ビジネスを拡大する活動を「アクセル」だとすると、不正を防ぐ仕組みは「ブレーキ」で、両方が大事だと思います。
幸い、最近は不正防止を含めた企業のリスクマネジメントの重要性が認識されてきており、下世話な話ですがこうした業務に従事する人の企業内の処遇も昔より良くなっていると思います。以前は内部監査部というと定年前の「上がりポスト」と言われましたが、今は若手の精鋭が行くことも珍しくありません。
社会人としての仕事の一つとして、あるいは企業を興したい人が自分の会社の成長のために、こうした話もぜひ知ってもらえるとよいと思います。
なお、今回は企業不正を取り上げましたが、公的団体や政治家などについては不正防止の仕組みが弱いように思います。このテーマについては改めて考える機会を持ちたいと思います。
企業年金:確定給付か確定拠出か
今日の某新聞で「確定拠出年金の加入者数が確定給付年金のそれを超えた」という記事がありました。
この新聞では、たびたび「確定給付オワタ」「これからは確定拠出」というスタンスの記事が多いのですが、これは本当でしょうか。
今回は、公的年金に加えて我々の老後の生活を支える企業年金のあり方について考えてみます。
■両制度の仕組み
本題に入る前に、両制度の特徴を確認しておきましょう。
確定給付年金は、年金給付額の計算式があらかじめ決まっている制度です。
例えば「退職した時の月収の30%」といった決め方をし、企業は従業員にこのような年金を支払うことを約束します。
企業は、この額を支払うため、資産運用をして資金を積み立てるのですが、資産運用で失敗すると資金が足りなくなるので、その分を会社が埋め合わせる必要があります。
一方、確定拠出年金は、企業が一定の計算式で計算した掛金を従業員の年金口座に振り込み、従業員がこの資金を資産運用して、たまったお金の中を使って自分の年金のする仕組みです。従業員が資産運用で失敗しても企業は穴埋めする必要がありません。
■これまでの経緯
日本では20世紀後半に企業年金の普及が始まりましたが、当時は確定給付年金しかありませんでした。
しかし、バブル崩壊などを背景に、2001年に確定拠出年金も実施できることになり、その後約20年をかけて普及が進んできたわけです。
なぜ確定拠出年金の導入が進んだか?
まず、バブル崩壊後に資産運用環境が悪化して、確定給付年金での資産運用がうまくいかなくなり、穴埋めのために企業が年金の掛金引き上げを強いられるケースが増えたことが挙げられます。2000年にこれに関する企業の会計基準が厳しくなったことも影響しています。
確定拠出年金では企業が穴埋めをする義務がないため、企業に好まれるようになったわけです。
■確定拠出年金の課題
一方で、確定拠出年金の普及にはまだ課題も多くあります。
まず、従業員自身が資産運用する仕組みに対してまだ根強い反対論があります。金融機関の社員ならいざ知らず、普通の人は「資産運用しなさい」と言われてもそう簡単にはできないということです。企業は従業員に一定の投資教育をすることになっていますが、現状をみると従業員の理解度は芳しくはないようです。
また、上記とも関連しますが、企業の財務などのメンバーがまとめて資産運用をする確定給付年金と比べ、確定拠出年金ではすべての従業員が個々に運用をするので、運用の効率が良くないという指摘もあります。これは年金先進国のアメリカやイギリスでも似た状況があるようです。
■今後の展望
記事では、今後すべての企業年金が確定拠出になるようなトーンに見えますが、筆者は必ずしもそうとは言えないと考えます。
まず、上で述べたように、確定拠出年金には種々の課題があり、従業員の労働モチベーションに悪影響が出たり、運用が非効率になったりすることが挙げられますので、確定拠出年金への移行が企業にとってベストの選択とは言えない場合もあると思います。
また、現存する確定給付年金では、目標運用利回りの引き下げなどの財政健全化が進んでいるケースも多く、企業にとって追加負担が多く出る可能性が小さくなっている面もあります。ちなみに海外では終身年金(受給者が生きている限り年金を払い続ける)が主流で、寿命が延びると追加の負担をしなければならないのですが、日本の企業年金はこの仕組みをとっていない場合がほとんどで、この「長生きリスク」がない点で恵まれています。
このように、あえて従業員の不満を生んでまで確定拠出年金に移行しなくてもよいと考える企業も少なくないかもしれません。
とはいえ、世間の空気の影響は大きいので、そうした「風潮」に乗っかって確定拠出年金に移行する企業もありそうです。逆に言えば、従業員のことを考えて確定給付年金を継続する企業は、ある意味「ホワイト企業」といえるかもしれません。
■おわりに
企業年金は、従業員自身で選べるわけではなく、自分の勤務先の企業がどう考えて制度を実施するかに左右されます。
従業員ができることは、
・そもそも自分の会社がどんな企業年金をやっているのか?
・確定拠出だった場合に自分はどう資産運用したらよいか
といったことになると思います。
公的年金だけではゆとりある生活が送れない今後、企業年金のこともよく調べておいて損はないでしょう。
ランニングの経済効果~コロナ後の展望も考えてみた
ランニング人口が増えているようです。
ある調査によると、2018年のランニング人口は、年1回以上走 るライト層が96
4万人(人口の9.3%)、週1回以上走るコア層が550万人( 人口の5.3%)と
なっています。
2002年はこの約半分だったので、15年ほどで倍増したことに なります。
出所:笹川スポーツ財団
https://www.ssf.or.jp/thinktan k/sports_life/data/jogrun_ 9818.html
また、別の調査によると、コロナ禍で手軽にできる健康法として2 020年はさらに急増
しているようです。
実は筆者もランナーで、5年ほど前に始めましたが、今年1年でさ らに熱心に取り組
むようになりました。
今日は自分の実体験も交えて、ランニングと経済、そしてコロナが 与える影響などに
ついて考えてみます。
■ランニングの経済効果
ランニングが経済に与える影響としては、以下のような項目が挙げ られます。
<製品系>
スポーツシューズ より速くまたは楽に走れるシューズ
ウェア・グッズ類 快適に走れる、あるいはおしゃれなウェア・帽子・ランニ
ングマスクなど
ガジェット(スマートウォッチ等) 走ったタイムやコース・距離を詳細かつ簡単
に記録できる機械
食品 長く走るための栄養ジェルや高濃度酸素水など
<サービス系>
大会・イベント開催 地方開催時の旅行・宿泊・観光や、参加者および応援者の飲
食費など
自分自身の体験ですが、2020年は熱を入れましたので、1年間 でシューズとス
マートウォッチとウェアで10万円程度は使いました。
自分は遠征はしたことがないですが、遠征する人はさらにお金を使 います。
仮に週1ランナー550万人全員が年間10万円使うとすると年間 の支出は5500億円
となります。
結構大きな市場ですね。
■ウィズコロナ時代のランニングと経済
コロナの影響で大会やイベントの開催は難しくなっており、上記の 経済効果のうち
サービス系は低迷していると思います。
もともと町興しや村興し目的で開催されていた大会も多いので、地 方にとっては大き
な打撃と思います。
一方で、各自がそれぞれの場所で走った記録を申告する「オンライ ンマラソン大会」
も増えています。
参加賞もあったりします。
自分もある地方のオンライン大会に参加したのですが、その参加賞 の干物がとっても
美味しく、その後も継続してその干物を取り寄せて食べるようにな りました。
これは、地方経済の活性化というマラソン大会の目的が実現できた 好事例だと思いま
す。
苦境の中でもいろいろ工夫の余地があるということですね。
■これからのランニング関連ビジネス
今後さらにこのビジネスを伸ばすには何が必要でしょうか?
上記の調査によると、ランナーは男性が女性の2倍以上になるそう です。
男性の方が「凝り性」あるいは「ドM」だからでしょうか(笑)
それはさておき、女性ランナーが少ないということは、それだけ未 開拓の市場が大き
いということでもあります。
女性がランニングをもっと楽しめるよう、「おしゃれでカワイイウ ェアやグッズの開
発」「日焼け止めや肌荒れ・寒さ対策などに資するケア用品」「ラ ンニング中に楽し
いコミュニケーションができるツール」などを提供できる企業が有 望かもしれませ
ん。
もちろん、男女共通のニーズもたくさんあると思います。速く長く 走れるシューズ
や、コロナ感染対策を意識したグッズなどがあれば売れるだろうと 思います。
■おわりに
いろいろランニング市場について考えてみましたが、こうしたアイ ディアは自分がラ
ンナーであるからこそ出てくる面もあると思います。
「風が吹けば桶屋が儲かる」的な話ではありましたが、自分が好き なことだからこ
そ、こうした想像を膨らませられる面もあると思います。
みなさんも、ご自身が好きなテーマや趣味の領域についてこうして 考えてみると、い
ろいろアイディアが出ると思います。
そのことが新しいビジネスのチャンスになったり、株式投資で成功 する機会につなが
るといいですね。
では、また!